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「夏の会合」 講演抄録A

 

 
『外国人(欧米人)が求めるおもてなし』
 
上山田温泉 亀清旅館 若旦那 タイラー・リンチ 氏
   
 

欧米人はどんな日本文化に興味があるか

 

 今日は、欧米人が日本に来て「どういうおもてなしを求めているか」についてお話します。来日する欧米人には、日本に興味を持って来る人と仕事などで来る人の2通りありますが、日本に興味がある人についてお話します。

 日本に興味を持つ一番のきっかけは、ハリウッド映画だと思います。私が子供の頃『ベストキッド』を見て、かっこいいと思いました。今までのスポーツの感覚と違った、空手の奥深い世界に感動しました。最近では『ラストサムライ』を見て、侍の世界はかっこいいなと日本に興味を持つ人もいます。『スターウォーズ』の戦いはまさに剣道の世界です。

 柔道をはじめとした武道にも人気があります。湯田中温泉のある旅館には、弓道ができる道場があ
り、まず神棚に礼をすることから始まりますが、欧米のスポーツにはない奥深さに、興味をもつ人が外国人には多いです。
 姫路の同業者の話では、外国人の第一の目的は姫路城ですが、第二は、映画に登場したお寺で座禅体験をすることだそうです。映画『SAYURI』の芸者さんの世界も欧米人には興味を引かれるものです。
 
 武道だけではなく、茶道や書道にも興味があります。欧米人は漢字が好きで、書くことに憧れます。生け花や日本庭園も人気があり、私の地元シアトルでは、ワシントン大学の一部が日本庭園になっています。日本に行って庭園を観たい、庭園や庭木・盆栽の勉強もしたいと興味を持つかもしれません。日本の釘一本使わない木造建築や着物の世界も魅力があります。
 浮世絵も海外で人気があります。長野県では、小布施に美術館がありますし、松本では松本城が一番人気ですが、次は浮世絵美術館だそうです。浮世絵は昔のいわゆるポップアートですが、現在は漫画やアニメが海外でブームになっていて、日本文化に興味をもつケースが多いと思います。
長野県は欧米人の求めるものがかなり揃っていると思います。私の宿に泊まる欧米人が長野県に来る目的は、9割の人がお猿の温泉「地獄谷」です。もう一つ人気があるのは、戦国時代の興味から「川中島」です。

 私の場合、どうして日本に興味が涌いたかというと、地元のシアトルは港町で、100年以上前から日本との貿易があり、日系企業が多いのです。大学に入って日本語を習えば将来プラスになると思って日本語を習いはじめたら、日本の文化に興味が涌き、神戸へ留学して、「こんな国があるんだ」と刺激を受けました。卒業後もっと日本語を習いたくて、上田市で英会話講師をやっているとき亀清旅館の娘と知り合って、シアトルに連れて行って、結婚しました。


   
 

日本の素晴らしさを活かした観光客誘致

 

 欧米人はケチな旅をします。例えば、JRのフリーパスを買い、宿の予約をすると、あとは食事代しか残らないのです。長野県内のJRは限られてしまい、戸隠へ行くにも、上高地に行くにもバスに乗ることになるので、予算がないわけです。なぜこんな話をするかというと、長野県は海外から旅行者を呼び込む以外に、もっと近くの日光や金沢や飛騨高山から呼ぶ方法があるのですが、そうすると、JRのフリーパスの行き先が限られることがハードルです。長野県のフリーパスが必要だと私は言い続けています。
 
 新しい動きとして、去年、白馬の商工会から戸倉上山田の観光協会に問合わせがありました。冬の白馬に滞在しているオーストラリア人のスキーやスノーボードのオフにお猿の温泉ツアーや松本城・わさび農園ツアーがありますが、もっとメニューを増やすために温泉に入り、懐石料理を食べて芸者さんの芸に触れ合う商品を作ってはどうかという話でした。その時、海外から旅行者を呼ぶだけでなく、白馬から呼ぶ手もあることに気づき、「ランチと芸者さん」の商品を計画して、今年の冬に実施できたらいいなと考えています。


 私が上山田に来てありがたかったのは、日本の伝統文化を守っている神楽保存会に誘われたことです。先週、温泉夏祭りがありましたが、うちに泊まった県外の人も「どうしてこんな小さな町でこれだけ大きな祭りができるんだ」と喜んでもらいました。3年前に偶然祭りを見て感動したデンマークの人も、翌年「休みが取れたのでまた行くわ」とメールがきて、お神輿を担ぎました。今年もまた来たので3年連続です。もっと欧米人に日本の祭りの素晴らしさに触れてほしいです。
 シアトルに有名な市場があり観光スポットのひとつになっていますが、その中の魚屋さんは、「魚いかがですか」と声をかけて、お客さんと会話を交わしています。そのオーナーは日系人です。彼のビジネスの考え方は、お客さんと魚を売り買いした後は、その人と二度と会わないかもしれないけれど、もしかしたら友達になるかもしれない、夫婦になるかもしれないという可能性もあることを頭に入れて行動すれば、違った効果や結果が生まれるということです。欧米人はそのようなサービスを求めています。
 

 最後に日本のことわざの「灯台下暗し」の話になります。私が布団を敷きながら「よろしければ、近くのきれいな夜景のスポットに一緒に行きませんか」と声をかけて、姨捨駅から見える夜景を見にご案内すると、みなさんに喜んでいただきますが、日本人はあまり行かないですし、地元の人はなおさら行きません。目の前にあるのに価値がわからないところがあると思うのです。日本の文化は奥深く、“世界の遺産”だと思います。プライドを持ってもっと活かしてほしいと思います。
 
 私が大町の中学校に観光の勉強で呼ばれた時、大町と黒部アルペンルートの観光客は、今4分の1が台湾人で、日本人が少なくなっていると聞き、去年家族で行って見て驚きました。30、40年前の観光地のままだったからです。見るところより土産屋が多く、私が学生の頃に日光の華厳の滝に行った時に、「土産屋はいっぱいあるけど、滝はどこ?」というのと同じでした。その頃の日本人の団体観光客は、有名なところに行って写真を撮り、お土産を買って戻って来るという観光をしていましたが、今の日本人は進化しています。

 今の観光は、「好きな人と、好きなところで、好きなことをやる」ものに変わってきています。日本の観光地は、どれだけそれに応えられるかが生き残る道です。大町と黒部アルペンルートは50年前にできたのに、それからほとんど投資をせず、そのままです。日本人のお客さんが買わない商品を外国人が買うはずがありません。だから、日本のすばらしさをもっと活かしていく努力が必要です。長野県はたくさんすばらしいところがありますから、ご一緒に魅力ある観光地をつくって行きましょう。

 

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